活動
研究開発項目7:実社会実証実験
最新活動報告
研究開発課題1:企業連携実証実験基盤の開発・運営と企業コンソーシアム活動支援(宮下敬宏)
我々の研究グループでは、実証実験を容易に実施するための実証実験基盤を開発・整備する。複数の企業と連携し、1社では実現出来なかったCAの実用化に向けた社会実証実験に取り組む。これまでに、CAによる受付・案内サービスが提供可能な実証実験基盤を構築した。この基盤を活用し、国際電気通信基礎技術研究所 (ATR) のエントランスおよび共有スペースにおいて、CAによる受付・案内サービスの長期の社会実証実験を実施している。
我々は2021年8月にアバター共生社会企業コンソーシアムを設立した。2022年3月末現在で68法人が会員として登録している。コンソーシアムでは、本プロジェクトの成果を紹介するとともに、業種・業態毎に4つの分科会を立ち上げ、CAを活用した新事業の検討を開始した。本プロジェクトの研究開発成果を逐次活用し、実証実験基盤を継続的に開発するとともに、実社会実証実験を実施・運用し、その結果を各研究開発項目へ課題等をフィードバックしていく。
研究開発課題2:発達障害・うつ病患者実証実験研究(熊﨑博一)
我々は、ロボットが自閉症スペクトラム症 (ASD) 者をはじめとした精神障害者への支援にも役立つ可能性を示唆している。ASD者において、人間の訓練士よりも、アバターの方がタスクへの集中が高いことを明らかにしてきた。我々はASD者に使用するアバターの種類や形態については、現在まで様々な方法で検討してきた。外見がシンプルなアバターは、そのシンプルさと、愛着を促すこともあり、受け入れられている。アンドロイドアバターには、ロボットで訓練した成果を日常生活に汎化しやすい可能性があるという利点がある。ロボットとユーザーの親和性を考えることは、ロボット介入の潜在能力を最大限に引き出すために重要と考えている。アバター側の要因として、外見、運動、服装、髪型、配置は重要な要因である。また、年齢、性別、知能指数などの利用者側の因子は、ユーザーとアバターとの親和性に与える可能性がある。ASD者の支援者は、ASD介入におけるアバターの潜在的な役割を知らなかったり、気が付いていなかったりする。支援者がアバターの使用経験が豊富であれば、その経験に基づいてアバターの潜在的な役割の多くを特定することができる。これまでのところ、ASD者への支援を目的としたアバターの研究は少なく、そのための最適なロボットを実現するために、今後さらなる研究を進めていく。
研究室HP:https://www.med.nagasaki-u.ac.jp/psychtry/miraimental.html研究開発課題3:高齢者実証実験研究と企業コンソーシアムの運営(西尾修一)
本研究課題では高齢者の社会参加を可能とするCAを実現するための実証実験研究に取り組む。実証実験を通じて高齢者に適したCAの実現と課題を明らかにしていく。簡易に設置・利用が可能なCA/遠隔操作システムのプロトタイプを開発するとともに、大阪府堺市と共同で「泉北アバタープロジェクト」を立ち上げ、高齢者の意識調査と、区役所での案内、小学校での授業支援などCA遠隔操作の様々な実証実験を行ってきた。今後、高齢者による日常的なCA遠隔操作の実施と、CAを通じた社会参加をめざし、高齢者遠隔操作センタ(仮称)の設置とさらなる実証実験の拡大を進める。また遠隔操作によるタスクの構造化を進め、不慣れなタスクでも容易に安心して行える仕組みの実現を目指す。
研究開発課題4:5G通信環境の研究開発(村田正幸)
本研究課題では、CAの快適な遠隔操作を実現するために、通信品質の安定性を向上する5G通信技術の研究開発に取り組む。CA操作の内容や利用者/CAを取り巻く電波環境の変化に応じて、安定した通信品質を確保するための通信資源割当技術、サービススライシング機能、エッジコンピューティング機能等の研究開発と実証実験を進めている。現在、ローカル5Gの無線局免許を取得し、5G通信システムの運用を開始した。また、オープンソースソフトウェアベースの自作の5G基地局を構築し、CA遠隔操作に不可欠な上り通信の高速化、CA等の物体の位置予測に基づく通信資源割当を実証している。今後は電波環境の変化予測、CAの姿勢予測/タスク予測に基づいた通信品質の向上に取り組む。そのために、5Gシステムのコア機能を拡張しCA基盤との連携を図る。
研究開発課題5:技能特化型の遠隔操作モジュール群に対応した自律型CAの研究開発(袖山慶直)
実世界において、自律的に複雑なマルチタスクの活動が行えるロボットというのは、各タスクモジュールの不完全さと、全体を統合する行動モジュールの不完全さから、いまだ実用には至っていない。既存のロボットシステムの自律モジュールでは、特に認識と対話能力について技術的に解決し難い壁がまだ存在し、人共存の非構造化環境におけるタスク全体の実行信頼性は依然として低い。従来の方法で遠隔操作するとしても、自律モジュールの完成度が低いことで、操作者には高い操作スキルと長時間の操作時間工数が求められ、人の能力やコストを十分に超えることが出来ていない。この課題に対して本研究では、「技能特化型遠隔操作モジュールにより、複数台のロボットを高効率に遠隔運用可能とするシステム」の研究開発を行う.タスクをマイクロタスクに分解し、必要な技能毎に各機能モジュールを特化し、それぞれを「遠隔操作による人の能力で超高機能に強化する」という全く新しいアーキテクチャーを創出することで、これによる課題解決に挑戦する。このシステムを応用した実社会での社会実装のための実証実験を、主に高齢者介護施設をターゲットとして推進する。