活動
研究開発項目4:CA協調連携の研究開発
最新活動報告
研究開発課題1:自在CA制御技術の基盤研究開発(長井隆行・堀井隆斗)
本研究開発課題では、複数CAの同時遠隔操作・連携制御技術(自在CA制御)の基盤研究開発に取り組む。1人の操作者が同時に複数のCAを操作するには、タスクや環境に応じて、操作者の意図を理解しながら働く複数のCAを利用する技術が必要となる。例えば、治療準備、検査、処置、説明等の連携作業が頻繁に発生する病室では、CAは単独で行動するのではなく、複数体で連携して行動することで、より効率的に病室内作業を達成できるようになる。このように、CA間の連携により、1体のCAではできない多様なサービスを実現することができる。また、自在CA制御では、環境側に存在する人との関係や連携も考慮する必要がある。本研究開発課題では、CAが連携する生活環境や病室環境を実際に再現し、そこで活躍するCAを試作し、複数のCAからなるシステムを操作インターフェース含め開発する。研究開発項目5で策定されるCA基盤のプロトコルに基づきながら、室内環境におけるCA基盤のプロトタイプシステムを実現する。そして、研究開発課題2、3、4、5と連携して、実際にCAが連携する実証実験に取り組む。
研究開発課題2:階層的CA制御の研究開発(中村友昭)
複数のCAを効率良く連携させるためには、CAの階層的な制御構造を自己組織的に構築する必要がある。例えば、家庭環境において調理タスクを遂行する場合、調理するCA、片付けをするCA、配膳をするCAなど、それらの機能・身体に応じて役割分担し、自律的に実行し連携する必要がある。またこれらの階層構造は、状況に応じて臨機応変に組み替えられないといけない。こうしたCA連携の階層は、家庭内における具体的なサービスを連携して提供するレベルから、食事を提供するといった抽象的な観点で連携するレベルまで、複数の階層からなる。こうした階層的な構造を、CAの身体・機能・ユーザに応じて自己組織的に学習し、効率的に連携・協調するための技術を開発する。
研究開発課題3:生活環境対話技術の研究開発(杉浦孔明)
本研究開発課題では、生活環境において、CAが連携してサービスを提供する場合のクロスモーダル自在対話技術の研究開発に取り組む。家庭や病院等においてCAが利用者の支援を行うにあたり、薬の手渡しや物理的補助時に衝突可能性がある動作など、人間による遠隔操作やモニタリングが、社会通念上求められるタスクが存在する。これらのタスクでは、動作の承認・緊急時の遠隔操作・モニタリング等を操作者が行い、それ以外の状況では機械がタスクを遂行することが望ましい。また、環境中に複数のCAが存在する場合、利用者と対話しながらCAがタスクを最適に分担することが望ましい。これらの背景のもと、1) 生活環境においてCAが人と連携してサービスを提供する際のクロスモーダル自在対話、2) 複数のCAが連携して動的環境内の物体を操作する際に生じる環境・状況の変化に対応した自在対話、の2つのサブテーマについて研究開発を行う。
研究室HP:https://smilab.org/研究開発課題4:生活物理支援CAの研究開発(谷口忠大)
家庭環境やオフィス、病室環境で人間を支援する生活物理支援CAのための知能化技術を開発している。日常環境で生活物理支援を行おうとすると、単に対話支援を行うだけでなく、物を運ぶなど、移動を伴う作業が重要になる。物理的な遠隔操作のみならず、言語的(記号的)な指示に基づく遠隔操作のためには、CAは半自律性を有し、直接遠隔操作や自律的な探索を通して、生活環境を迅速にモデル化し、理解し、その文脈の下でユーザに従った行動を的確に行う必要がある。このためにCAの機能としての適応的なプランニング・ナビゲーション技術および多様な物体の協調マニピュレーション技術の開発、CA同士の連携機能としてのハンドリング技術や開発フレームワークについて研究開発に取り組んでいる。その一部の技術はWorld Robot Summit 2020(愛知大会)にて活用し、フューチャーコンビニエンスストアチャレンジ総合優勝を果たすなどしている。今後、ユーザの自然な遠隔操作やインタラクションを通して、複数台のCAがその支援の幅を広げていくような基礎技術およびシステムの開発を進めていく。
研究開発課題5:CA触覚マニピュレーションの研究開発(鈴木陽介)
CAによる様々な物理支援作業を高速化・高精度化するための、触覚センサの開発およびマニピュレーション技術の開発を行っている。家庭や病院でCAによる作業を行うとき、人間のような手が必要になる場合が多い。このようなマニピュレーションは時に、遠隔で行うことが難しく、触覚センサ情報に基づく操作補助を組み込んだ半自律化が必要となる。そこで、様々なCAプラットフォームの手(マニピュレータ)の構造や動き方に合わせた触覚・近接覚センサの開発を行っている。また、センサに基づく局所的な自律適応動作と、操作者による動作指令を、整合性を保ちながら重ね合わせることで、遠隔操作されたCAによる物理支援タスクの作業効率を向上する技術の研究開発に取り組んでいる。これまでに、3本指の器用なロボットハンドのためのセンサを開発・統合し、掴もうとする目標物体への接近時の誤差を自律的に補正する動作制御や、把持に先立って把持の安定性を予測することによる確実かつ高速な把持制御手法を開発した。現在、本手法を遠隔操作に導入して作業の高速化と操作負担の軽減への効果を検証すること、また、本手法を他のCAでも可能とするためのセンサ開発を進めている。
研究開発課題6:侵襲型BMIによるCA制御の研究開発(平田雅之)
課題推進者はこれまで身体障害者の運動・コミュニケーションを支援するため、植込み型ブレインマシンインターフェース (BMI) の研究開発に取り組んできた。しかし、現状ではBMIだけで思い通りの操作を行うには限界もある。そこで、本課題ではCAの自律制御によりBMIによる随意制御を補完・補助することにより、考えただけで思い通りにCAを遠隔操作できるようにすることを目指す。これまでにこのコンセプトにもとづいて、CAの上肢に関して、BMIにもとづいた3次元のアーム制御と、CA自律制御にもとづいたハンドの把持制御を調和制御できるようにした。CA自律制御では把持対象物の名称と3次元位置を自動認識して、BMIから把持意図を受け取ったら、把持操作を自律で遂行できるようにした。現在、下肢機能、コミュニケーション機能についても開発を行っており、アバターとしてHSRを導入して、BMIとCAの調和制御を実装していく計画である。最終的には、植込みBMIを装着した身体障害者が在宅からCAを遠隔操作して社会活動に復帰することを目指す。