活動
研究開発項目8:アバター社会倫理設計
最新活動報告
研究開発課題1:アバター共生社会倫理コンソーシアム運営とアバターコミュニケーションの研究(中野有紀子)
対面コミュニケーションでは、言葉だけでなく、音声の韻律、表情、視線、ジェスチャ等の非言語情報が会話参加者間で互いにやり取りされる。意味を伝えるのは主に言語情報であるが、非言語情報はそれを円滑、かつ正確に伝える重要な役割を持つ。このような、会話中の言語・非言語情報を解釈する人間の社会的知性の計算モデルを構築し、それを実現する人工知能の研究を遂行している。さらに、社会的知性の計算モデルを搭載し、言語と非言語情報を解釈・表出しながら人と会話ができるロボットやアニメーションエージェントの開発にも取り組んでいる。これらの技術開発を通して、人に寄り添い、人の手助けとなる人工知能の実現を目指す。
主要研究テーマ
- 言語・非言語データを用いた機械学習に基づくマルチモーダルコミュニケーションのモデル化
- 言語・非言語行動を用いて人とコミュニケーションする知的な人工物(アニメーションエージェントやロボット)の実現
- 言語・非言語情報に基づく会話参加者の特性推定技術
- 言語・非言語情報に基づくコミュニケーションの状態推定技術
- 人間の行動データに基づくユーザインタフェースの評価手法
研究開発課題2:モラルコンピューティングの研究開発(神田崇行)
実際の日常生活の場で、人々とかかわりあいながら、人々と共存し、協調して活動する「人らしいロボット」の実現を目指している。そのために、人々の行動を認識するセンサネットワーク技術、自然で円滑なコミュニケーションを実現するヒューマンロボットインタラクション技術、フィールド実験などによる人々と「人らしいロボット」との関わりあいの解明といった研究に取り組んできた。また、ロボットが「モラル」という観点で他者として尊重される存在となり、環境に安心感をもたらすインタラクションを行えるようにするためのモラルインタラクションの研究にも取り組んできた。これらを背景にして、CAの安心安全な利用を保証するモラルコンピューティングの開発に取り組んでいる。
研究室HP:https://www.robot.soc.i.kyoto-u.ac.jp/研究開発課題3:モラル行動の研究(久木田水生)
CAと社会的規範の接点に生じる問題、いわゆるELSI(倫理的、法的、社会的問題)の研究に取り組んでいる。誰もがCAを利用できるアバター社会では人々のアイデンティティのあり方、人と人の関り方、コミュニケーションの在り方が大きく変化するだろう。そしてそこには大きな期待と同時に、様々な倫理的懸念が存在する。そこで我々は技術の開発と同時に、CAによって人々のアイデンティティ、人と人との関わり、コミュニケーションがどのように変化するか、そしてその社会的な影響はどのようなものであるかを、特に道徳的行動の観点から問い、新しい技術と社会に必要な新しい倫理指針を作り上げる。また近年のロボット倫理学において、ロボットの道徳的地位がいかなるものでありうるか、あるいはあるべきかということが重要な論点になっているが、CAの実現はこれらの問題をより喫緊のものにする。私たちはこのような問題もアバター社会倫理の一部であると考え、取り組んでいる。またCAがスムーズに社会に受容されることを目指して、アバター社会におけるモラル行動の倫理を広く社会に向けて提言し、その普及のための活動を実施している。
研究室HP:http://www.is.nagoya-u.ac.jp/dep-ss/phil/kukita研究開発課題4:プライバシー問題の研究(石井夏生利)
本研究課題では、CAとプライバシーに関する問題を研究する。第1に、CAが物理空間で人に代わる役割を果たすようになると、人は匿名性を保ちつつ、自宅に居ながらにして実世界で様々な社会的活動を行うようになることが予想される。その際、CAの利用主体は、CAの外貌や容姿、性格などを自由に決めたり、複数の人格を使い分けることができる。また、仮に実社会でCAがトラブルに遭遇したり何らかの失敗を犯した場合でも、利用主体は、CAを再形成することで社会に容易に復帰することができる。本項目では、利用主体がCAを自由に形成し、自己のアバターとして活動させる利益の法的位置づけについて、プライバシー権の観点から考察する。第2に、CAやその管理システムにセキュリティ上の欠陥などが存在した場合に、CAの行動や知覚パターンなどが他者に収集され、CAが乗っ取られる場合があり得る。利用主体が実際の自己に近いCAを活動させていた場合には、人が実社会で行動する以上に、詳細にわたるプライバシーが不正に開示される危険性も否めない。そこで、CAのなりすましを防止し、事故が発生した場合の被害回復について、プライバシーの侵害リスクに応じた対応策を検討する。
研究開発課題5:アバター法の研究(新保史生)
CAの研究開発、利用、社会実装及びに受容性に係る法的課題を明らかにするための研究を実施している。CAを社会において利用するにあたって検討が必要な法的課題を研究するとともに、それらを用いた技術が社会においてスムーズに利用されるための社会的受容性のあり方についても検討を行っている。これまで、「ロボット法」として新たな研究領域の開拓を行ってきた。現在、CA利用及び社会的普及に必要な新たな法解釈及び法的課題解決の方途の提案を中心とする「アバター法」に係る研究を行うことを目標とし、そのために必要な法整備に向けた提言及び新たな社会規範の提案を試みている。新型コロナウイルス感染症のような不顕性感染を有する感染症(有症者が伝播の主体であるが、発症前の潜伏期にある感染者を含む無症状病原体保有者からの感染リスクがある感染症)であって、かつ、一類感染症やそれに準ずる国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある新感染症が今後発生したとき、非接触技術としての自律型・遠隔ロボット等の有体物としてのCA及びCGアバター等の無体物CAを活用したコミュニケーションの重要性は今後さらに高まると思料されるため、そのために必要な社会規範の研究も実施している。
研究開発課題6:アバターの社会実装課題研究(湯淺墾道)
選挙によって選ばれた公職者等、特別の立場にあるユーザーがCAを利用する際に問題となる法的課題について研究している。これらのユーザーは、一般のユーザーとは異なり、公職選挙法などの特別の法律の規制を受けることがある。これまでの研究により、公職選挙法の規定により選挙運動が規制されているため、CAを選挙運動に利用することはきわめて困難であることが明らかとなった。今後は、その他のイベント等の場面におけるCAの利用の是非について、研究を進める。